作者について

龍村光峯さんという人

アーティストプロフィール:錦の伝統織物 光峯「錦織の小物たち展」2017.11.9(木)~11.19(日)

展示内容: 手織り錦織を使用した小物や帯 (展示・販売)

アーティスト: 錦の伝統織物「光峯」 龍村光峯氏、龍村周氏

開催日:2017年11月9日(木)〜11月19日(日)

時間:10:30〜18:00

場所:KURYU-SANKO-DO(くりゅうさんこどう)メインスペース

 

静かな情熱家 龍村光峯氏

【略歴】織物美術家。本名、龍村順。1946年生 祖父に初代龍村平蔵(号・光波)、父に二代龍村平蔵(号・光翔)。1976年、家業継承のため京都へ帰り、(株)龍村平蔵織物美術研究所<現(株)龍村光峯>代表取締役に就任(1976年)。

古代裂の復原をはじめ、錦の伝統織物作品、緞帳、記念品などを制作。日本伝統織物保存研究会を設立し、理事長に就任(1994年)。財団法人日本文化藝術財団より日本伝統文化振興賞受賞(2000年)。財団法人全国税理士共栄会文化財団より全税共地域文化賞受賞(2002年)。

ヨーロッパ四か国巡回展開催。その他、奈良国立博物館、九州国立博物館、京都文化博物館、芦屋市立美術博物館など展覧会を多数開催。国際日本文化研究センター主催の国際シンポジウム「日本の伝統工藝再考・外から見た工藝の将来とその可能性」に参加。同志社大学プロジェクト科目嘱託講師。

その他、講演会、シンポジウム、講義など多数。著書に『錦―光を織る』(小学館)、『KOHO 龍村光峯作品集』(光琳社)ほか。

織額「龍星雲錦」

錦織のマエストロ(指揮者)

龍村光峯氏

光峯氏は言う。

「私は、錦織というオーケストラの前に立つ指揮者です。」と。

 

なんて謙虚で責任感のある表現かと思う。

実際、世界最高峰の織物と称される「錦織」の工程はとても多く複雑で、絹糸の製造からデザイン、織上がりまでになんと70名もの職人の手を必要とするそう。高度な技術が必要とされる錦織だからこそ、細かく専門分業制となっている。製糸職人、糸染め職人、文意匠図職人、箔(金箔、銀箔)職人…数えきれないほどの職人が、それぞれの分担である専門の技を極めている。

それに織機や機を織るための道具製造にも、それぞれ専門の職人の技を必要とする。そのどれが欠けても、最高の錦織には完成しない。

錦の織物は、組織が多重になっている。そのため仕上りは立体的で、空気と光を含みふんわりとキラキラとしている。光峯氏の織物作品は、額に入れて飾るにふさわしい、まさに芸術品。

光峯氏は、それぞれの職人の優れた技術が合わさってこそ最高峰の錦織が生まれる事を、例えて自分を指揮者という。

 

指揮者はしかし、オーケストラの出来栄えを完全に左右する。すべての奏者が最高の演奏が出来るよう、すべてに目を配り厳しく指示をする―。

錦織 糸染め光峯氏は、とても穏やかで丁寧な方である。しかし、とても厳しい人だと思う。それは、作品のストイックな美しさに現れている。

かの有名な初代龍村平蔵氏が祖父、二代目龍村平蔵氏が父という家柄にあり、しかしそこに甘んじるわけでも驕るわけでもなく、ただより美しく、より高度な錦織創りに邁進する。

「京都風」「手仕事」「伝統文化」など、言葉だけが先行しがちな昨今だが、光峯氏が織物職人を支えるのは “デントウの手シゴトをたいせつに!守ろう文化!” といったぬるいものではなく、「職人の手で作られたものが、間違いなくコンピューターやオートメーションに勝る」からである。

錦織 糸繰

製織ひとつとっても、機械織と手織りでは風合いが全く異なる。そのことは、糸づくり、糸繰などすべての工程で言える。ひいては、使う道具が職人の手作りか大量生産の物かでも、織物の仕上りが異なるそうだ。最高の織物を仕上げるために、全てにこだわり、妥協をしない。

こだわり抜いた結果、伝統技法に戻る。現在残る織物工房の中でも、長い長い「紋紙」(デザイン図を型紙に穴で記したもの。膨大な量になる。)をパタパタさせながら一目一目手織りしている工房は、私は他に見たことが無い。

光峯工房は京都市内の工房だが、「西陣織」のラベルを敢えて付けない。

 

 

“過去の遺産の消費者になってはならぬ、常に創造的であれ”

これは、光峯氏の言葉。この言葉に、秘めたる思いやこれまでの苦労が込められているような気がする。

「平成という時代を代表し、100年先も歴史に残る錦織を」

果たしてこれほどの思いで作品作りをする人がどれほどいるだろうか。

 

マエストロという言葉には、”芸術家、専門家に対する敬称”の意味もあるそうだ。まさに錦織のマエストロである。

静かな光峯氏の周りには、熱い志を同じくする人が集う。

錦の伝統織物 光峯「錦織の小物たち展」2017.11.9(木)~11.19(日)

工房HPはこちら http://www.koho-nishiki.com/

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